舞踏馬鹿の独り言
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表と裏しかない木の葉が、表とも裏ともいえない姿で溶け合いながら、出鱈目じゃない、一度として繰り返される事のない必然の流れをたどって落ちてくるわけだ、
光と闇のはざ間に出没を繰り返し、目に見えぬ震えを一輪握りしめながら木の葉は落ちてくるわけだ、そうして必ず地に落ちるわけだ。
「間をいかに持っているかで踊りが決まってくるんですよ」
「大丈夫やってごらんなさい、大丈夫できますよ、行きたい方へ行ってごらんなさい、べつに行かなくたっていいんですけどね、行ってごらんなさい、好きな所へ。
花が風に揺れていて回りの湿気に滲み出ていき、かすかにぶれて歩いてごらんなさい、隠れて震えている闇をそっと抱いてあげるんです。」
「消える物が存在するんでねー、見える物は虚像なんですよ。」
「人間はねー、残念ながら死ねないんです。」
抱きたいと思った時にはもう空間に抱かれていてしょげ返ってしまった。
目で追った時にはもうずーっと前から見つめられていた。
感情に溺れてしまった時、走ってきて背中を一発叩かれ
「陶酔するんじゃないよーっ。」と怒鳴られ、
「20倍の速さで踊りなさい、もっと速く、100倍のスピード、遅いっ、出鱈目じゃないんですよ、一つ一つ確かにしているんです、遅いっ、もっと速く、」
迷いだらけの様な動きから痙攣の様に成り、揺れ動く草原に捕らえられ大きな雲の流れに身を拡張され奪われていった。
「それに関わっている意志も無くすんだーっ。
もぬけのからになるんですよっ。
そう。
そこから初めて舞踏は出発するんです。」
「おいっ、火の玉、どうしたっ。」
「先生、溺れています、
ひどく、ゆっくりと。」
【1986年ホモフィクタス号外(追悼土方巽)に寄せて】
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