舞踏馬鹿の独り言
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顔だけの表現という事は、
私には存在しません。
やったところでたかが知れています。
もちろん気持ちなど何の関係もありません。
邪魔するだけですから、
白紙や空っぽの体にならなければ
始められないのですから。
体というのは呼び名で分けられていますが、
複雑に絡み合い繋がり伝達しあう
一つの固まりです。
体の中からの分岐、分裂、部分や全体を消す作業、
更に誕生させる作業など有りますが、
それは遥かに先の話で、
まず体という一つの固まりとして
立てるかどうかが問題です。
顔の筋肉一本の動きは
足の裏や背中、内臓など
体の何処かの場所との連動によって引き起こされるのであり、
顔というのは一般に言う
首から先では無く、
体全体が顔なのです。
顔の表情とは体の表情であり、
顔の筋肉だけを動かして作られるものでは無く、
体中から現れ出されるものなんです。
更にその体を誘発する為に
体を開き拡張し、
空間に内臓をぶら下げ、更に変質し、
空間に流され粉化し、巨大化していったり、
背後に吸引された石壁のざらつきの中に埋め込まれたり、
悲鳴の中に失神して結晶化したり、
わざわざ顔を変にしてみようなどという
悠長な暇は無いんです。
舞踏の動きとは、
深刻にゆっくり、
何か立派な事を考えながら動いているとか、
気持ち悪い顔とか変な動きを
これでもかとするものとか
思われるのは屈辱です。
舞踏の動きとは忙しいものです。
余裕の無い力技なのです。
一瞬でも空っぽの肉体を持つ人が好きだ、
何物かに心を奪われ
ただ見つめ続ける子供の後ろ姿、
空っぽになった体が拡がり、
風景に染まり、
滲み出し、
輪郭だけがコトンと
置かれた様に佇んでいる。
何物かに心を蝕まれ、
感情の塊としての物質と化した人。
もう何も考えられない、
更に内部が虫喰われ
崩壊しつくし、
指で一押しされると、
カタンカタンカターンと崩れ落ちる
木箱のように壊れてしまう姿。
あるいは細い神経に
ほんのわずか剃刀の刃をたてたなら、
巨大なビルが一気に地鳴りをたてて崩壊し、
舞い上がる粉塵の中
後には空白だけがただ彷徨っている姿。
自分の感情を守り残しているような体は
何か生臭くて嫌いだ、
自分の体の内部に過剰な意味付けを持ち込もうとして
有り難がろうとする体は
あまり好きになれない。
体の内部こそ外部であり、
永遠に未知の世界なので、
自分自身だけでこの体を従属させたいというのは、
勝手なひとりよがりのエクスタシーだ、
じゃ、
感情は見えない方が良いのか、
そんなことはない、
空っぽの肉体こそ
尊い必死な感情を慈しみ、
命の光を発光している。
ていねいな作り物を仕上げていく
職人さんの手を見ていると、
偉いなと見入ってしまう。
ていねいな的確さが積み重ねられていく、
分析できない山のような技術が
見せびらかす事無く、
たたみ込むように
あるいは一気におこなわれていく。
余計な言葉も無く
微笑みかけられた時、
生きている事が恥ずかしい。
一途に石である石は偉い、
割られようが削られようが
時という力に風化され砂になっても、
一途に石であり続ける。
何が私に欠けているのだろう、
静かに歩む事。
激しさも静寂の中に内在させる、
激しさの密度で静寂を作り上げる
潔さ。
特に鍵をかける習性のない私の体に
ズカズカと土足で入り込み、
勝手に名札を貼ったり
よく分からない
仕掛けをしていく者達が
ひっきりなしにいる。
思い起こせば
視線の欲望と
茫漠とした皮膚感覚と内臓感覚と
くらいしか
知らない頃からそうだった。
何も言えず、
ただ漠然と眺めているしか術の無い私に、
お前が何もできないから
俺達がやってやってるんだと
切る様な視線を流し、去ってゆく。
私は自然なままから始めたかった、
少なくとももう少し素直でありたかった、
粉が舞い散る機械音の中に
静かに沈む
命の呼吸をする死体に
すがりつき、
抱きしめる、
抱きしめる、
抱きしめる、
お前こそ生きるべきだったのに、
お前こそ生きるべきだったんだよと。
薄く開いた扉の外に、
すっかり降り積もる雪と化した子が
静かにたたずんでいる。
遠くで薄絹が裂けるような泣き声を隠し、
見つめ続けている事すら
知られてはいけない事のように潜んでいる。
振り返って欲しいんだろう、
抱きしめて欲しいんだろう、
抱きしめられても、
まるでいけない事をしてしまった者のように
静かに潜んでいる。
雪が体温で溶けるように
消えてしまう事を望んでいる。
あなたの存在は正しいんだよ、
天地に祝福されているんだよ、
いつも振り向けば
花のような笑顔でたたずんでいるけれど、
一人うつむくあなたの悲しい思いこそ
私は溶かして消してしまいたい、
この世の始めから、
そんな物は何も無かった事なんだと
全て消し去ってしまいたいんだと。